前に戻る エレミヤ哀歌 🔝

 

〘1378㌻〙

第1章

1 ああ哀かなしいかな古昔むかしは人ひとのみちみちたりし此この都邑みやこ いまは凄さびしき樣さまにて坐ざし 寡婦󠄃やもめのごとくになれり 嗟あゝもろもろの民たみの中うちにて大おほいなりし者もの もろもろの州くにの中なかに女王によわうたりし者もの いまはかへつて貢みつぎをいるる者ものとなりぬ 2 彼かれよもすがら痛いたく泣なきかなしみて淚なみだ面かほにながる その戀こひ人びとの中なかにはこれを慰なぐさむる者ものひとりだに無なく その朋ともこれに背そむきてその仇あだとなれり 3 ユダは艱難なやみの故ゆゑによりまた大おほいなる苦役くえきのゆゑによりて擄とらはれゆき もろもろの國くにに住󠄃すまひて安息やすみを得えず これを追󠄃おふものみな狹隘󠄆はざまにてこれに追󠄃おひしきぬ 4 シオンの道󠄃路みちは節󠄄會せちゑの上のぼり來くる者ものなきがために哀かなしみ その門もんはことごとく荒あれ その祭司さいしは歎なげき その處女をとめは憂うれへ シオンもまた自みづから苦くるしむ 5 その仇あだは首かしらとなり その敵てきは享さかゆ その愆とがの多おほきによりてヱホバこれをなやませたまへるなり そのわかき子等こらは擄とらはれて仇あだの前󠄃まへにゆけり 6 シオンの女むすめよりはその榮華さかえことごとく離はなれされり またその牧伯等きみたちは草くさを得えざる鹿しかのごとくに成󠄃なり おのれを追󠄃おふものの前󠄃まへに力ちからつかれて步あゆみゆけり 7 ヱルサレムはその艱難なやみと窘迫󠄃くるしみの時ときむかしの代よにありしもろもろの樂たのしき物ものを思おもひ出いづ その民たみ仇あだの手てにおちいり誰たれもこれを助たすくるものなき時とき 仇人あだびとこれを見みてその荒あらはてたるを笑わらふ 8 ヱルサレムははなはだしく罪つみををかしたれば汚穢けがれたる者もののごとくになれり 前󠄃さきにこれを尊󠄅たふとびたる者ものもその裸體はだかを見みしによりて皆みなこれをいやしむ 是これもまたみづから嗟なげき身みをそむけて退󠄃しりぞけり 9 その汚穢けがれこれが裾もすそにあり 彼かれその終󠄃局をはりをおもはざりき 此故このゆゑに驚おどろくまでに零落おちぶれたり 一人ひとりの慰なぐさむる者ものだに無なし ヱホバよわが艱難なやみをかへりみたまへ 敵てきは勝󠄃かちほこれり 10 敵てきすでに手てを伸のべてその財寳たからをことごとく奪うばひたり 汝なんぢさきに異邦󠄆人ことくにびと等らはなんぢの公󠄃會こうくわいにいるべからずと命めいじおきたまひしに 彼かれらが聖󠄃所󠄃せいじよを侵󠄃をかしいるをシオンは見みたり
 1378㌻ 
11 その民たみはみな哀なげきて食󠄃物くひものをもとめ その生命いのちを支󠄂さゝへんがために財寳たからを出いだして食󠄃しよくにかへたり ヱホバよ見みそなはし我われのいやしめらるるを顧󠄃かへりみたまへ 12 すべて行路人みちゆくひとよ なんぢら何なにともおもはざるか ヱホバその烈はげしき震怒いかりの日ひに我われをなやましてわれに降󠄄くだしたまへるこの憂苦うれひにひとしき憂苦うれひまた世よにあるべきや考かんがへ見みよ 13 ヱホバ上うへより火ひをくだしわが骨ほねにいれて之これを克服󠄃かちふくせしめ 網󠄄あみを張はりわが足あしをとらへて我われを後うしろにむかしめ 我われをして終󠄃日ひねもす心こゝろさびしくかつ疾やみわづらはしめたまふ〘1056㌻〙 14 わが愆尤とがの軛くびきは主しゆの御手みてにて結むすばれ諸もろ〳〵の愆とがあひ纒󠄂まつはりてわが項くびにのれり 是これはわが力ちからをしておとろへしむ 主しゆわれを敵あたたりがたき者ものの手てにわたしたまへり 15 主しゆわれの中うちなる勇󠄃士ますらををことごとく除のぞき 節󠄄會せちゑをもよほして我われを攻せめ わが少わかき人ひとを打うちほろぼしたまへり 主しゆ酒榨さかぶねをふむがごとくにユダの處女をとめをふみたまへり 16 これがために我われなげく わが目めやわが目めには水みづながる わがたましひを活いかすべき慰なぐさむるものわれに遠󠄄とほければなり わが子等こらは敵てきの勝󠄃かてるによりて滅ほろびうせにき 17 シオンは手てをのぶれども誰たれもこれを慰なぐさむる者ものなし ヤコブにつきてはヱホバ命めいをくだしてその周󠄃圍󠄃まはりの民たみをこれが敵てきとならしめたまふ ヱルサレムは彼かれらの中なかにありて汚けがれたる者もののごとくなりぬ 18 ヱホバは正たゞし 我われその命令おふせにそむきたるなり 一切すべての民たみよわれに聽きけ わが憂苦うれひをかへりみよ わが處女をとめもわかき男をとこも俘囚とらはれて往󠄃ゆけり 19 われわが戀人こひびとを呼よびたれども彼かれらはわれを欺あざむけり わが祭司さいしおよびわが長老としよりは生命いのちを繋つながんとて食󠄃物くひものを求もとむる間まに都邑まちの中うちにて氣息いきたえたり 20 ヱホバよかへりみたまへ 我われはなやみてをり わが膓はらわたわきかへり わが心こゝろわが衷うちに顚倒てんたうす 我われ甚はなはだしく悖もとりたればなり 外そとには劍つるぎありてわが子こを殺ころし 內うちには死しのごとき者ものあり
 1379㌻ 
21 かれらはわが嗟歎なげくをきけり 我われをなぐさむるもの一人ひとりだに无なし わが敵てきみなわが艱難なやみをききおよび 汝なんぢのこれを爲なしたまひしを喜よろこべり 汝なんぢはさきに吿つぐしらせしその日ひを來きたらせたまはん 而しかして彼かれらもつひに我わがごとくに成󠄃なるべし 22 ねがはくは彼等かれらが與あたへし艱難なやみをことごとくなんぢの御前󠄃みまへにあらはし 前󠄃さきにわがもろもろの罪愆つみとがのために我われにおこなひし如ごとく彼かれらにも行おこなひたまへ わが嗟歎なげきは多おほくわが心こゝろはうれひかなしむなり

第2章

1 ああヱホバ震怒いかりをおこし 黑雲くろくもをもてシオンの女むすめを蔽おほひたまひ イスラエルの榮光さかえを天てんより地ちにおとし その震怒いかりの日ひに己おのれの足凳あしだいを心こゝろにとめたまはざりき 2 主しゆヤコブのすべての住󠄃居すみかを呑のみつくしてあはれまず 震怒いかりによりてユダの女むすめの保砦とりでを毀こぼち これを地ちにたふし その國くにとその牧伯等きみたちを辱はづかしめ 3 烈はげしき震怒いかりをもてイスラエルのすべての角つのを絕たち 敵てきの前󠄃まへにて己おのれの右みぎの手てをひきちぢめ 四面あたりを焚やきつくす燃もゆる火ひのごとくヤコブを焚やき 4 敵てきのごとく弓ゆみを張はり 仇あだのごとく右みぎの手てを挺󠄂のべて立たち 凡すべて目めに喜よろこばしきものを滅ほろぼし シオンの女むすめの幕屋まくやに火ひのごとくその怒いかりをそそぎたまへり 5 主しゆ敵てきのごとくに成󠄃なりたまひてイスラエルを呑のみほろぼし その諸もろ〳〵の殿とのを呑のみほろぼし そのもろもろの保砦とりでをこぼち ユダの女むすめの上うへに憂愁うれひと悲哀かなしみを增ましくはへ〘1057㌻〙 6 園そののごとく己おのれの幕屋まくやを荒あらし その集會あつまりの所󠄃ところをほろぼしたまへり ヱホバ節󠄄會せちゑと安息日あんそくにちとをシオンに忘󠄃わすれしめ 烈はげしき怒いかりによりて王わうと祭司さいしとをいやしめ棄すてたまへり 7 主しゆその祭壇さいだんを忌棄いみすて その聖󠄃所󠄃せいじよを嫌󠄃きらひ憎にくみて その諸もろ〳〵の殿とのの石垣いしがきを敵てきの手てにわたしたまへり 彼かれらは節󠄄會せちゑの日ひのごとくヱホバの室いへにて聲こゑをたつ 8 ヱホバ、シオンの女むすめの石垣いしがきを毀こぼたんと思おもひさだめ 繩󠄂なはを張はり こぼち進󠄃すゝみてその手てをひかず 壕ほりと石垣いしがきとをして哀かなしましめたまふ 是これらは共ともに憂うれふ
 1380㌻ 
9 その門もんは地ちに埋うづもれ ヱホバその關木くわんぬきをこぼちくだき その王わうともろもろの牧伯きみは律法おきてなき國人くにびとの中なかにあり その預言者よげんしやはヱホバより異象いしやうを蒙かうむらず 10 シオンの女むすめの長老等としよりたちは地ちに坐すわりて默もくし 首かうべに灰󠄃はひをかむり 身みに麻󠄃あさをまとふ ヱルサレムの處女をとめは首かうべを地ちに低たる 11 わが目めは淚なみだの爲ために潰つぶれんとし わが膓はらわたは沸わきかへり わが肝きもは地ちに塗まみる わが民たみの女むすめほろぼされ 幼少をさなきものや乳󠄃哺子ちのみごは疲つかれはてて邑まちの街衢ちまたに氣息いきたへなんとすればなり 12 かれらは疵きずを負󠄅おへる者ものの如ごとく邑まちのちまたにて氣息いきたえなんとし 母はゝの懷ふところにその靈魂たましひをそそがんとし 母はゝにむかひて言いふ 穀物こくもつと酒さけとはいづくにあるやと 13 ヱルサレムの女むすめよ 我われなにをもて汝なんぢにあかしし 何なにをもて汝なんぢにならべんや シオンの處女をとめよ われ何なにをもて汝なんぢになぞらへて汝なんぢをなぐさめんや 汝なんぢのやぶれは海うみのごとく大おほいなり 嗟あゝたれか能よく汝なんぢを醫いやさんや 14 なんぢの預言者よげんしやは虛むなしき事ことと愚おろかなることとなんぢに預言よげんし かつて汝なんぢの不義ふぎをあらはしてその俘囚とらはれをまぬかれしめんとはせざりき その預言よげんするところは唯たゞむなしき重荷おもにおよび追󠄃放おひはなたるる根本もととなるべき事ことのみ 15 すべて往󠄃來ゆききの人ひとなんぢにむかひて手てを拍うち ヱルサレムの女むすめにむかひて嘲󠄂あざけりわらひ かつ頭かうべをふりて言いふ 美麗󠄃うるはしきの極きはみ全󠄃地ぜんちの欣喜よろこびととなへたりし邑まちは是これなるかと 16 なんぢのもろもろの敵てきはなんぢに對むかひて口くちを開あけ あざけり笑わらひて切齒はがみをなす 斯かくて言いふわれら之これを呑のみつくしたり 是これわれらが望󠄇のぞみたりし日ひなり 我われら已すでに之これにあへり 我われらすでに之これを見みたりと 17 ヱホバはその定さだめたまへることを成󠄃なし いにしへより其その命めいじたまひし言ことばを果はたしたまへり ヱホバはほろぼして憐あはれれまず 敵てきをして汝なんぢにかちほこらしめ汝なんぢの仇あだの角つのをたかくしたまへり 18 かれらの心こゝろは主しゆにむかひて呼よばはれり シオンの女むすめの墻垣かきよ なんぢ夜よも晝ひるも河かはの如ごとく淚なみだをながせ みづから安やすんずることをせず 汝なんぢの瞳󠄂子ひとみを休やすむることなかれ〘1058㌻〙
 1381㌻ 
19 なんぢ夜よの初更󠄃しよかうに起󠄃おきいでて呼よびさけべ 主しゆの御前󠄃おんまへに汝なんぢの心こゝろを水みづのごとく灌そゝげ 街衢ちまたのほとりに饑󠄃うゑたふるるなんぢの幼兒をさなごの生命いのちのために主しゆにむかひて兩手もろてをあげよ 20 ヱホバよ視みたまへ 汝なんぢこれを誰たれにおこなひしか 願ねがはくは顧󠄃かへりみたまへ 婦󠄃人をんなおのが實みなるその懷いだき育そだてし孩兒をさなごを食󠄃くらふべけんや 祭司さいし預言者よげんしや等ら主しゆの聖󠄃所󠄃せいじよにおいて殺ころさるべけんや 21 をさなきも老おいたるも街衢ちまたにて地ちに臥ふし わが處女をとめも若わかき男をとこも刃やいばにかかりて斃たふれたり なんぢはその震怒いかりの日ひにこれを殺ころし これを屠󠄃ほふりて恤あはれみたまはざりき 22 なんぢ節󠄄會せちゑの日ひのごとくわが懼おそるるところの者ものを四方よもより呼よびあつめたまへり ヱホバの震怒いかりの日ひには遁󠄅のがれたる者ものなく又󠄂またのこりたる者ものなかりき わが懷いだき育そだてし者ものはみなわが敵てきのためにほろぼされたり

第3章

1 我われはかれの震怒いかりの笞しもとによりて艱難なやみに遭󠄃あひたる人ひとなり 2 かれは我われをひきて黑暗󠄃くらきをあゆませ光明ひかりにゆかしめたまはず 3 まことに屢々しば〳〵その手てをむけて終󠄃日ひねもすわれを攻せめなやまし 4 わが肉󠄁にくと肌膚はだへをおとろへしめ わが骨ほねを摧くだき 5 われにむかひて患苦くるしみと艱難なやみを築きづきこれをもて我われを圍󠄃かこみ 6 われをして長久とこしなへに死しにし者もののごとく暗󠄃くらき處ところに住󠄃すましめ 7 我われをかこみて出いづること能あたはざらしめわが鏈索くさりを重おもくしたまへり 8 我われさけびて助たすけをもとめしとき彼かれわが祈禱いのりをふせぎ 9 斫きりたる石いしをもてわが道󠄃みちを塞ふさぎわが途󠄃みちをまげたまへり 10 その我われに對たいすることは伏ふして伺うかがふ熊くまのごとく潜ひそみかくるる獅子しゝのごとし 11 われに路みちを離はなれしめ 我われをひきさきて獨ひとりくるしましめ 12 弓ゆみを張はりてわれを矢や先さきの的まととなし 13 矢筒えびらの矢やをもてわが腰󠄃こしを射󠄂いぬきたまへり 14 われはわがすべての民たみのあざけりとなり 終󠄃日ひねもすうたひそしらる
 1382㌻ 
15 かれ我われをして苦にがき物ものに飽󠄄あかしめ茵蔯いんちんを飮のましめ 16 小石こいしをもてわが齒はを摧くだき灰󠄃はひをもて我われを蒙おほひたまへり 17 なんぢわが靈魂たましひをして平󠄃和へいわを遠󠄄とほくはなれしめたまへば我われは福祉さいはひをわすれたり 18 是こゝにおいて我われみづから言いへり わが氣力ちからうせゆきぬ ヱホバより何なにを望󠄇のぞむべきところ無なしと 19 ねがはくは我わが艱難なやみと苦楚くるしみ茵蔯いんちんと膽汁たんじふとを心こゝろに記とめたまへ 20 わがたましひは今いまなほ是これらの事ことを想おもひてわが衷うちに鬱ふさぐ 21 われこの事ことを心こゝろにおもひ起󠄃おこせり この故ゆゑに望󠄇のぞみをいだくなり 22 われらの尙なほほろびざるはヱホバの仁愛いつくしみによりその憐憫あはれみの盡つきざるに因よる 23 これは朝󠄃あさごとに新あらたなり なんぢの誠󠄃實まことはおほいなるかな 24 わが靈魂たましひは言いふ ヱホバはわが分󠄃ぶんなり このゆゑに我われ彼かれを待まち望󠄇のぞまん 25 ヱホバはおのれを待まち望󠄇のぞむ者ものとおのれを尋󠄃たづねもとむる人ひとに恩惠めぐみをほどこしたまふ〘1059㌻〙 26 ヱホバの救拯すくひをのぞみて靜しづかにこれを待まつは善よし 27 人ひとわかき時ときに軛くびきを負󠄅おふは善よし 28 ヱホバこれを負󠄅おはせたまふなれば獨ひとり坐ざして默もくすべし 29 口くちを塵ちりにつけよ あるひは望󠄇のぞみあらん 30 おのれを擊うつ者ものに頬ほゝをむけ 充足みちたれるまでに恥辱はづかしめをうけよ 31 そは主しゆは永久とこしなへに棄すつることを爲なしたまはざるべければなり 32 かれは患難なやみを與あたへ給たまふといへどもその慈悲あはれみおほいなればまた憐憫あはれみを加くはへたまふなり 33 心こゝろより世よの人ひとをなやましかつ苦くるしめ給たまふにはあらざるなり 34 世よのもろもろの俘囚人とらはれびとを脚あしの下したにふみにじり 35 至高者いとたかきものの面かほの前󠄃まへにて人ひとの理りを抂まげ 36 人ひとの詞訟󠄃うつたへを屈かがむることは主しゆのよろこび給たまはざるところなり 37 主しゆの命めいじたまふにあらずば誰たれか事ことを述󠄃のべんにその事こと即すなはち成󠄃ならんや 38 禍わざはひも福さいはひもともに至高者いとたかきものの口くちより出いづるにあらずや 39 活いける人ひとなんぞ怨言つぶやくべけんや 人ひとおのれの罪つみの罰ばつせらるるをつぶやくべけんや 40 我等われらみづからの行おこなひをしらべかつ省かへりみてヱホバに歸かへるべし 41 我われら天てんにいます神かみにむかひて手てとともに心こゝろをも擧あぐべし
 1383㌻ 
42 われらは罪つみををかし我われらは叛󠄃そむきたり なんぢこれを赦ゆるしたまはざりき 43 なんぢ震怒いかりをもてみづから蔽おほひ 我われらを追󠄃攻おひせめ殺ころしてあはれまず 44 雲くもをもてみづから蔽おほひ 祈禱いのりをして通󠄃つうぜざらしめ 45 もろもろの民たみの中なかにわれらを塵埃ちりあくたとなしたまへり 46 敵てきは皆みなわれらにむかひて口くちを張はれり 47 恐懼おそれと陷阱おとしあなまた暴行あらびと滅亡ほろび我われらに來きたれり 48 わが民たみの女むすめの滅亡ほろびによりてわが眼めには淚なみだの河かはながる 49 わが目めは斷たえず淚なみだをそそぎて止やまず 50 天てんよりヱホバの臨のぞみ見みて顧󠄃かへりみたまふ時ときにまで至いたらん 51 わが邑まちの一切すべての女等むすめどもの故ゆゑによりてわが眼めはわが心こゝろをいたましむ 52 故ゆゑなくして我われに敵てきする者ものども鳥とりを追󠄃おふごとくにいたく我われをおひ 53 わが生命いのちを坑あなの中なかにほろぼし わが上うへに石いしを投なげかけ 54 また水みづわが頭かしらの上うへに溢󠄃あふる 我われみづから言いへり滅ほろびうせぬと 55 ヱホバよ われ深ふかき坑あなの底そこより汝なんぢの名なを呼よべり 56 なんぢ我わが聲こゑを聽きゝたまへり わが哀歎なげきと祈求いのりに耳みゝをおほひたまふなかれ 57 わが汝なんぢを龥よびたりし時ときなんぢは近󠄃ちかよりたまひて恐おそるるなかれと宣のたまへり 58 主しゆよなんぢはわが靈魂たましひの訴うつたへを助たすけ伸のべ わが生命いのちを贖あがなひ給たまへり 59 ヱホバよ なんぢは我わがかうむりたる不義ふぎを見みたまへり 願ねがはくは我われに正たゞしき審判󠄄さばきを與あたへたまへ 60 なんぢは彼かれらが我われを怨うらみ われを害󠄅がいせんとはかるを凡すべて見みたまへり 61 ヱホバよなんぢは彼かれらが我われを詈ののしり 我われを害󠄅がいせんとはかるを凡すべて聞きゝたまへり 62 かの立たちて我われに逆󠄃さからふ者等ものどもの言語ことばおよびその終󠄃日ひねもすわれを攻せめんとて運󠄃めぐらす謀計はかりごともまた汝なんぢこれを聞きゝたまへり〘1060㌻〙 63 ねがはくは彼かれらの起󠄃居たちゐをかんがみたまへ 我われはかれらに歌うたひそしらる 64 ヱホバよ なんぢは彼かれらが手てに爲なすところに循したがひて報むくいをなし 65 かれらをして心こゝろくらからしめたまはん なんぢの呪詛のろひかれらに歸きせよ 66 なんぢは震怒いかりをもてかれらを追󠄃おひ ヱホバの天てんの下したよりかれらをほろぼし絕たちたまはん
 1384㌻ 

第4章

1 ああ黃金わうごんは光ひかりをうしなひ純金じゆんきんは色いろを變へんじ 聖󠄃所󠄃せいじよの石いしはもろもろの街衢ちまたの口くちに投なげすてられたり 2 ああ精金せいきんにも比くらぶべきシオンの愛子等あいしらは陶噐師すゑものしの手ての作さくなる土つちの器うつはのごとくに見做みなさる 3 山やま犬いぬさへも乳󠄃房󠄃ちぶさをたれてその子こに乳󠄃ちゝを哺のます 然しかるにわが民たみの女むすめは殘忍󠄄むごく荒野あれのの鴕鳥だてうのごとくなれり 4 乳󠄃哺兒ちのみごの舌したは渇かわきて上腭うはあごにひたと貼つき 幼兒をさなごはパンをもとむるも擘さきてあたふる者ものなし 5 肥甘物うまきものをくらひ居をりし者ものはおちぶれて街衢ちまたにあり 紅くれなゐの衣服󠄃ころもにて育そだてられし者ものも今いまは塵堆ちりづかを抱󠄃いだく 6 今いま我民わがたみの女むすめのうくる愆とがの罰ばつはソドムの罪つみの罰ばつよりもおほいなり ソドムは古昔むかし人ひとに手てを加くはへらるることなくして瞬またたく間あひだにほろぼされしなり 7 わが民たみの中うちなる貴たふとき人ひとは從前󠄃さきには雪󠄃ゆきよりも咬潔󠄄きよらかに乳󠄃ちゝよりも白しろく 珊󠄄瑚さんごよりも躰󠄂からだ紅色くれなゐにしてその形貌かたちのうるはしきこと藍玉あをだまのごとくなりしが 8 いまはその面かほくろきが上うへに黑くろく 街衢ちまたにあるとも人ひとにしられず その皮かはは骨ほねにひたと貼つき 乾かわきて枯かれ木きのごとくなれり 9 劍つるぎにて死しねる者ものは饑󠄃うゑて死しねる者ものよりもさいはひなり そは斯かゝる者ものは田圃たはたの產物なりいでものの罄つくるによりて漸々やう〳〵におとろへゆき刺さゝれし者もののごとくに成󠄃なればなり 10 わが民たみの女むすめのほろぶる時ときには情󠄃愛なさけふかき婦󠄃人等をんなたちさへも手てづから己おのれの子等こどもを煮にて食󠄃しよくとなせり 11 ヱホバその憤恨いきどほりをことごとく洩もらし 烈はげしき怒いかりをそそぎ給たまひ シオンに火ひをもやしてその基礎いしづゑまでも燒やかしめ給たまへり 12 地ちの諸しよ王わうも世よのもろもろの民たみもすべてヱルサレムの門もんに仇あだや敵てきの打うちいらんとは信しんぜざりき 13 斯かくなりしはその預言者よげんしやの罪つみによりその祭司さいしの愆とがによれり かれらは即すなはち正たゞしき者ものの血ちをその邑まちの中なかにながしたりき 14 今いまかれらは盲人めくらのごとく街衢ちまたにさまよひ 身みは血ちにて汚けがれをれば人ひとその衣服󠄃ころもにふるるあたはず 15 人ひとかれらに向むかひて呼よばはり言いふ 去されよ穢けがらはし 去され去され觸ふるるなかれと 彼かれらはしり去さりて流離さすらへば異邦󠄆人いはうじんの中間なかにても人々ひと〴〵また言いふ 彼かれらは此こゝに寓やどるべからずと
 1385㌻ 
16 ヱホバ怒いかれる面おもてをもてこれを散ちらし給たまへり 再ふたゝびこれを顧󠄃かへりみたまはじ 人々ひと〴〵祭司さいしの面かほをも尊󠄅たふとばず長老としよりをもあはれまざりき 17 われらは賴たのまれぬ救援󠄃たすけを望󠄇のぞみて目めつかれおとろふ 我われらは俟まちゐたりしが救拯すくひをなすこと能あたはざる國人くにびとを待まちをりぬ〘1061㌻〙 18 敵てきわれらの脚あしをうかがへば我われらはおのれの街衢ちまたをも步あるくことあたはず 我われらの終󠄃をはりちかづけり 我われらの日ひつきたり 即すなはち我われらの終󠄃をはりきたりぬ 19 我われらを追󠄃おふものは天空󠄃そらゆく鷲わしよりも迅󠄄はやし 山やまにて我われらを追󠄃おひ 野のに伏ふしてわれらを伺うかがふ 20 かの我われらが鼻はなの氣息いきたる者ものヱホバに膏あぶらそそがれたるものは陷阱おとしあなにて執とらへられにき 是これはわれらが異邦󠄆ことくににありてもこの蔭かげに住󠄃すまんとおもひたりし者ものなり 21 ウズの地ちに住󠄃すむエドムの女むすめよ悅よろこび樂たのしめ 汝なんぢにもまたつひに杯さかづきめぐりゆかん なんぢも醉ゑひて裸はだかになるべし 22 シオンの女むすめよ なんぢが愆とがの罰ばつはをはれり 重かさねてなんぢを擄とらへゆきたまはじ エドムの女むすめよ なんぢの愆とがを罰ばつしたまはん 汝なんぢの罪つみを露あらはしたまはん

第5章

1 ヱホバよ我われらにありし所󠄃ところの事ことをおもひたまへ 我われらの恥辱はづかしめをかへりみ觀みたまへ 2 われらの產業もちものは外國人とつくにびとに歸きし われらの家屋いへは他國人あだしくにびとの有󠄃ものとなれり 3 われらは孤子みなしごとなりて父󠄃ちゝあらず われらの母はゝは寡婦󠄃やもめにひとし 4 われらは金かねを出いだして自己おのれの水みづを飮のみ おのれの薪たきゞを得うるにも價あたひをはらふ 5 われらを追󠄃おふ者ものわれらの頸くびに迫󠄃せまる 我われらは疲つかれて休やすむことを得えず 6 食󠄃物くひものを得えて饑󠄃うゑを凌しのがんとてエジプト人びとおよびアッスリヤ人びとに手てを與あたへたり 7 われらの父󠄃ちゝは罪つみををかして已すでに世よにあらず 我われらその罪つみを負󠄅おふなり 8 奴僕等しもべどもわれらを制せいするに誰たれありて我われらを之これが手てよりすくひ出いだすものなし 9 荒野あれのの刀兵つるぎの故ゆゑによりて我われら死しを冐をかして食󠄃物くひものを得う 10 饑󠄃饉ききんの烈はげしき熱ねつ氣きによりてわれらの皮膚はだへは爐かまどのごとく熱ねつし
 1386㌻ 
11 シオンにて婦󠄃人をんな等たちをかされユダの邑々まち〳〵にて處女等をとめらけがさる 12 侯伯きみたる者ものも敵てきの手てにて吊つるされ 老おいたる者ものの面かほも尊󠄅たふとばれず 13 少わかき者ものは石磨󠄃いしうすを擔になはせられ 童子わらべは薪たきゞを負󠄅おふてよろめき 14 長老としよりは門もんにあつまることを止やめ 少わかき者ものはその音󠄃おん樂がくを廢はいせり 15 我われらが心こゝろの快樂たのしみはすでに罷やみ われらの跳舞をどりはかはりて悲哀かなしみとなり 16 われらの冠冕󠄅かんむりは首かうべより落おちたり われら罪つみををかしたれば禍わざはひなるかな 17 これが爲ために我われらの心こゝろうれへ これらのために我われらが目めくらくなれり 18 シオンの山やまは荒あれはて 山やま犬いぬはその上うへを步あるくなり 19 ヱホバよなんぢは永遠󠄄とこしなへに在います なんぢの御位みくらゐは世々よゝかぎりなし 20 何なにとて我われらを永ながく忘󠄃わすれ われらを斯かくひさしく棄すておきたまふや 21 ヱホバよねがはくは我われらをして汝なんぢに歸かへらしめたまへ われら歸かへるべし 我われらの日ひを新あらたにして昔日むかしの日ひのごとくならしめたまへ 22 さりとも汝なんぢまつたく我われらを棄すてたまひしや 痛いたくわれらを怒いかりゐたまふや〘1062㌻〙
 1387㌻